[小滝橋動物病院]
東京都新宿区の動物病院
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CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

犬の口腔内悪性黒色腫

犬の口腔内悪性黒色腫は、口腔内腫瘍の中で最も発生率の高い悪性腫瘍と知られており、平均発生年齢は11.4歳齢で、性差は明らかではなく、所属リンパ節の他、肺、脳、皮膚など全身の各所に転移しやすい腫瘍です。
口腔内では歯肉に最も多発し、次いで口唇および頬粘膜からも発生します。まれに舌、咽頭、扁桃などにもみられることがあります。
悪性黒色腫は、重層扁平上皮の基底層に存在するメラニン産生細胞(メラノサイト)の腫瘍で、細胞は上皮内に存在し、神経堤に由来する非上皮系細胞です。口腔内に発生するメラノサイト腫瘍は皮膚よりも悪性度が高いといわれておりますが、口腔内の発生部位による組織像・悪性度などの差異はないようです。
症状として、摂食・飲水障害や顔面の腫大、腫瘤の口腔外への突出などにより気づかれることがほとんどです。転移率は高く、約70%は所属リンパ節に、67%は遠隔部位に転移し、肺野に最も転移します。ただし、局所の制御も重要であり、無治療での生存期間中央値は65日、外科摘出単独での生存期間中央値は150〜318日、1年生存率は35%以下と報告されています。

本症例は、15歳去勢雄の柴犬です。
他院からのセカンドオピニオンで来院されました。
食欲は問題ありませんが、口腔内腫瘍の増大や流涎が認められるとのことでした。
口腔内の腫瘤は、頬粘膜から発生しており、針吸引生検による細胞診検査および全身のスクリーニング検査(血液検査、レントゲン検査、超音波検査など)を実施しました。明らかな所属リンパ節および肺などの遠隔転移は認められず、細胞診検査からは悪性腫瘍が疑われ、術前CT検査実施後、外科手術の運びとなりました。
術中の写真
術直後の外貌写真


 病理組織学的検査結果は、悪性黒色腫でした。マージン部での腫瘍増殖は認められませんでしたが、悪性度の高い腫瘍なので、局所再発や転移には注意が必要でした。術後補助化学療法(カルボプラチン)を行うと、生存期間中央値は440日と報告がありますが、本症例では化学療法の希望はありませんでした  その後、定期検診を行いながらご自宅でゆっくり過ごしていただき、7ヶ月後に扁桃部に新規腫瘤病変の発生による呼吸困難を呈し、飼い主様の希望により安楽死を行いました。

 口腔内腫瘍は犬猫において決して珍しい病気ではなく、腫瘍の種類により再発しやすい腫瘍、転移しやすい腫瘍などの特性があります。日頃の歯磨きや健康診断により早期発見することで、早期治療にとりかかることができ、予後をより良くすることができると思われます。

獣医師 牧野

参考書籍:Veterinary Oncology, 犬と猫の治療ガイド2015